アラ還オヤジの備忘録

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一人のマネージャーは何人のスタッフを持てるのか


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今からもう随分と前のことだ。その日、私は自分の上司と新幹線での出張に同行していた。彼はマレーシア系のシンガポール人で、日本の顧客と面談するため来日していた。その日は大阪の顧客を訪問するため早朝に東京から新幹線で大阪に入り、午後早い時間に東京に戻る旅程だった。

 

隣の席に座る彼は、私に唐突にこう尋ねた。「日本では一人のマネージャーは何人のスタッフを持つことが一般的なのか?」

 

私は自らの経験に基づき思案し、そして答えた。「会社の規模や組織によると思いますが、我々のような本社勤務では、普通は10人弱、最大でも20人は超えないと思いますが。」

 

私の上司はその答えを聞き、しばらく黙ったまま、やや不機嫌そうに窓の外を眺めた。そして返事はなかった。

 

今にして思えば、なんと間抜けな答えだったろうと思う。いわゆる"管理職”というものになってからすでに10年以上も経ち、その間多くの部下を持つ経験をしながら、一度として、「一人のマネージャーはいったい何人の部下を持つことが最適なのか」というクエスチョンを自らに問うたことがなかったのだ。全く恥ずかしい限りで、そんな私に上司もさぞがっかりしたことだろう。

 

その後、「一人のマネージャーが持つ部下の数の最適解」について、何らかのヒントが得られないか、いろいろな方から話を聞き、また、ビジネス書を読んだりしたが、なかなかしっくりくる答えはなかった。

 

そんな中、出会ったのが「インテル経営の秘密」(原題:HIGH OUTPUT MANAGEMENT)だ。

著者のアンディ・グローブは「マネジャーの部下は何人が適切か」というセクションを立てて、自らの経験から明確につぎのように述べている。「6人から8人くらいの部下がよく、3、4人では少なく、10人では多すぎる。」と。その理由については、是非本書をお読み頂きたいとのだが、その内容は自分にとっては"腹落ち”するものだった。

 

「6人から8人くらいの部下」と聞いて、組織の状況から、(そのような人数にすることが難しいケースもあるのではないか)思われる向きもあると思う。たとえば××本部の下に○○部、△△部、□□部の三つしかなければ、××本部の本部長は、部下は○○部、△△部、□□部のそれぞれの部長である三人というケースが一般的なのではなかろうか。アンディ・グローブは、そのようなケースの対応策も本書の中で述べている。(簡単な話なのだが、読んだときには目から鱗だった。ただ、日本ではなかなか難しいのでは、と感じたのも事実だが。)

 

実は、私の手元にある「インテル経営の秘密」は1996年出版で、すでに廃刊となっている。しかし、2017年、原題の「ハイアウトプット マネジメント」として、新装再刊された。

理由はいろいろあると思うが、その一つは、ベン・ホロウィッツの「ハード・シングス」の影響ではなかろうか。ホロビッツは自著のなかで、たびたびアンディ・グローブの名前を出しており、実際に本書を読んでみると、ホロウィッツはグローブの熱烈な信奉者で、非常に大きな影響を受けていたであろうことをうかがい知ることができる。

「6人から8人くらいの部下がよく、3、4人では少なく、10人では多すぎる」。今であれば、かの上司に理由付きで説明できるのだが…。