アラ還オヤジの備忘録

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中途採用面接のジレンマ


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企業にとって、社員の採用は一大イベントだ。新卒採用ともなれば、一連の採用プロセスには途方もない時間、労力、そしてコストをかけることになる。企業規模によっては、百人以上の新卒予定者に対して複数回の面接を実施する。面接を受ける新卒の皆さんも大変だが、面接する方の労力も半端ない。一候補者当たり30分程度の面接を、複数の面接担当者が手分けしてこなす。このような場合、私の経験では、本来の業務時間は大きく削られることになり、その分、どこかで埋め合わせをしなければならない。

 

それに比べると、中途採用者の面接は、オープンになったポジションに応募してきた、"限られた”候補者に対して実施することが多く、時間的負担は新卒面接と比較すれば、極めて限定的だ。その一方で、中途採用者面接ならではの難しさもある。

 

中途採用に応募してくる候補者は、オープンになったポジションについて、知識も経験もある(履歴書や職務経歴書を見て、そのポジションに必要な知識・経験がなさそうと判断すれば、面接というステップにはなかなか進めないだろう)。さて、そのような候補者と面接する際、面接者はどのような基準で、採用・不採用を決めるべきなのだろうか。

 

中途採用者の面接の場合、面接時間は、普通は1時間程度だろう。その"1時間”の中で、履歴書・職務経歴書で述べられている知識・経験がその通りなのか、その人物の性格、行動様式は自社のカルチャー、候補者が所属するであろうチームになじみそうか、そして、最終的には、こちらが期待するパフォーマンスを発揮してくれるであろうと見込める人物なのか、判断しなければならない。

 

さて、それだけのことをたった1時間の面接で見抜くことが、果たして可能なのだろうか?

 

私自身の結論は"ノー”だ。知り合いのあるCEOは、中途採用について、「私はエージェントから紹介された候補者は絶対採用しない。自分が実際に一緒に働いたことがある人物、或いは、一緒に働いたことがある人物が紹介してきた人物しか採用しない」と言っていた。これは極論とも言えるが、気持ちはわかる。私自身の経験からしても、履歴書・職務経歴書の内容は申し分なく、面接での受け答えも文句がなかった候補者が、実際の業務では全く期待したようなパフォーマンスを発揮してくれないということが、決して少なくないからだ。

 

では、なぜ、面接をするのか?それは、"人を採用しなければならない”からだ。面接なしで人を採用することはあり得ない。面接という採用プロセスから得るものが少ないことを承知の上、五感を研ぎ澄まして、そこから"right person”を採用する手がかりを見出さなくてはならない。

 

では、その"手がかり”とは、どのようなものなのだろう。ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループ(USHG)CEOのダニー・マイヤーは、その著書「おもてなしの天才」(原題:Setting the Table)の中で、面接の難しさに触れたうえで、面接の際に、どうやって自分の"直感”に耳をすますのか、その方法を伝授している。

彼は面接の際に三つの仮定を立てて臨むべきと言う。仮定1は、「候補者と私(面接者)がディナーの席を持ったと仮定する」だ。では、そのように仮定して、どのような判断をするのか、また、仮定2と3は何なのか、詳しくは本書を実際に読んで頂きたいのだが、私自身、これまで何回となくこの方法を試してみて、確かに一理ある方法だと感じている。

 

コロナ禍が一向に収まる気配を見せない中、採用面接もリモート、というケースも増えていると聞く。そうであれば、実際の面談よりも、得られる情報はさらに限られたものにならざるを得ないだろう。面接者としては、ますます面接スキルを磨かざるを得ない。そんな中で、スキルの対極にある"直感”を磨くというアプローチもアリなのではないか。