アラ還オヤジの備忘録

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大阪都構想と会社組織


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一昨日、全国の耳目を集めた大阪都構想に対する住民投票が行われ、結果、僅差で反対多数となった。私は、大阪市民でも府民でもないので、大阪の皆さんが決めること、自分が気に留めることもない、という立ち位置で、日曜夜のNHKの特番を真剣に見るわけでもなく、結果についても、(そうなったか)という程度の感想だった。そもそも、「大阪府大阪市の二重行政を、大阪都に一元化、効率化する」というロジックには既視感があった。まるで会社の組織改編の際のアナウンスメントのようだと感じていたのだ。

 

組織改編というのは、どこの会社でもよくある話だ。例えば、マーケティング部と営業部の連携を緊密にするために“一元化”するとか、社員のフォローを厚くするため、プロジェクトマネージャーとは別にラインマネージャーを置くとか。しかし、面白いことに、このような組織改編は周期的に一方から他方へと行ったり来たりすることが多い。“一元化”した営業マーケティング部は、暫くすると「責任の明確化」のために、営業機能とマーケティング機能に分割・再編成され、プロジェクトマネージャーとラインマネージャーは、「二重管理の解消」のために、一人のマネージャーがプロジェクトマネジメントとラインマネジメントの両方の機能を担うことになったりする。

 

これは一体どうしたことか。良かれと思って組織改編したのに、暫くすると元に戻ってしまうとは。私が思うに、要は「完璧な組織形態というものは存在せず、それぞれに長所・短所がある」ということに尽きると思う。そういう意味において、組織の“立て付け”の議論に多くのコストと時間を費やすのは、(少なくとも会社組織においては)あまりよいスジではないと言えよう。

 

会社組織については、インテル元CEOのアンディ・グローブが、自著「HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント)」の中で、次のように述べている。

「組織は、二つの典型的な形態に分けられる。完全な “使命中心”の形態と、“機能別”編成形態である。」「現実の世界では、この“両極端”の間で妥協点を求めることになる。」「したがって、インテル社では今日、“混血”組織となっている。」

(「第8章 混血組織」より)

 

“使命中心”と “機能別”が、それぞれどのような組織を指すのかは、本書をお読み頂きたいのだが、大阪都構想に当てはめれば、ざっくり言えば、“府・市”は“使命中心”に近く、“都”は“機能別”と近いと言ったところか。グローブによれば、“使命中心”と、“機能別”の形態のそれぞれに存在理由があり、どちらが勝っているわけではない。また、どちらか一方に100%偏ってしまえば、とんでもない結末が待っている。(その事例として、グローブは本書の中で、彼の生まれ故郷であるハンガリーで彼が実際に体験した、中央計画機構の意思決定がもたらした非効率を紹介している。)会社組織であれ、自治体であれ、混血の“割合”を調整しながら、可能な範囲内で最適化を図っていくしかないのだ。

 

冒頭に述べた通り、私は大阪とは縁もゆかりもない。大阪都構想についても、テレビのニュースで報道されている以上の知識があるわけでもない。ただ、直感的には、今の大阪市大阪府の組織形態と、大阪都になった場合の組織形態とについて、一方が他方より大幅に優れている、或いは劣っているとは、思えない。現に東京都でも、千代田区などは10年以上も前から千代田“市”になりたいと言っているそうだ。大阪“都”になっても、しばらくしたら、“市”に戻りたいという声が出てくることも十分考えられる。もし、そうであるならば、“府・市” から“都”に移行するために、多くのエネルギー(と費用)を投入するのが理にかなっていると思えない(昨日の新聞報道で、大阪都構想の“準備”のために既に10億円が費やされていたというのには驚かされたが)。そういう意味では、今回の投票での、反対という“民意”は、合理的かつ実利的であったと言えるのではなかろうか。