アラ還オヤジの備忘録

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千葉市“入院調整中”に関する一考察


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千葉市は、新型コロナウイルス感染者の発生についての中で、市民の感染症患者の発生状況を毎日更新している。ここで公表されている数字のうち、入院中、入院調整中、宿泊療養等の数字を追ってみた。期間は、千葉県を含む首都圏1都3県を対象に、緊急事態宣言を発令された1月7日から3日後の先月10日から昨日までの、約一ヶ月間だ。

 

まず、最初の10日間(1月10~19日)は以下のグラフの通り。

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この間、緑線の“入院調整中”は、10日の392人から19日は731人へと、上昇の一途を辿っている。その一方、赤線の“入院中”と青線の“宿泊療養等”は、ほとんど変化が見られない。

もし、新型コロナ患者用のベットや、宿泊療養施設に余力があるのであれば、“入院調整中”の数の増加に伴い、“入院中”と“宿泊療養等”も上がっていくはずだが、そうならないのは、既にそれぞれのキャパシティを使い切ってしまっていると思うのだが如何だろうか。因みのこの期間のそれぞれの最大値は、“入院中”が77(1月16、17日)、“宿泊療養等”は32(1月10日)。千葉市の人口約98万人に対する数字として、これが日本国内において標準的なキャパなのか、他の政令指定都市の状況とも比較してみたいところだ。

それにしても、入院調整中731人という数字には背筋が凍る思いだ。731人目の患者の調整には、どれくらいの時間を要したのだろうか?(これについては、あとで考察する。)

 

ところが、事態はこれで収まらない。この“入院調整中”の増加は、その後も衰えることなく、5日後の1月24日に最高値(997人)を記録するまで上昇を続ける。

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ほぼ千人の患者が、入院先が決まるのを待っている一方、この間も、入院数は、ほとんど変化がない(最大値は1月24日の82)。行政としてはベット数増床を試みたと思われるが叶わなかったようだ。入院調整が必要な患者数の、あまりに急激な増加を目の前にして、立ち尽くすより他なかったのではないか。

因みに1月24日と言えば、東京都の感染者数が12日ぶりに千人を下回った日だ(986人)。世の中は、(緊急事態宣言の効果が表れてきたのでは)と、緊張の度合いを緩め始めた頃だ。しかし、(少なくとも千葉市における)医療現場の実態としては、最悪の状況だったと考えられる。

 

さて、その後、どうなったか。まず、1月末までの推移を見てみよう。

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ここで奇妙な現象が起こる。前日まで、急上昇を続けていた“入院調整中”が、今度は逆に急降下を始めたのだ。1月31日のそれは617人。僅か一週間で369人の減少だ。一体何が起こったのか。入院のキャパが増えたのかと言えば、そんなことはない。グラフで見るとおり、若干増加(1月31日で106人)しているが、“入院調整中”の急降下を説明するには余りにも少ない。それでは、退院が増加して、その分のベッドが空いたのか?グラフには示していないが、1月24日から31日までの間に退院したのは、51人※1。仮に1日24日以降、一人の“入院調整中”も発生しなかったとしても、入院キャパの微増と退院数を差し引いて、およそ300人の“入院調整中”が“消失”したことになる。なぜか。最も可能性が高いと思われるのは、入院調整中の患者が、その状況のまま罹患期間を経過・終了してしまい、入院を“調整”する必要がなくなったため、入院調整中の数字から外されたというケースだ。その場合、患者はじっと自宅で連絡を待つしかなかったのだろうか。因みに1月10日から31日までに間に千葉市で発生した患者数は、1,220人※2。入院が必要と判断されたのに入院できない患者が300人を超えるということは、約4人に一人の割合だ。この状況を表現するのに、“医療崩壊”以外の言葉を思いつかない。

 

最後に、2月に入ってから昨日までのデータを紹介する。

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2月に入ってからも、入院調整中の数字は2月5日まで減少し続け(397人)、1月10日のレベルに戻ったが、その後は一進一退という状況だ。因みに1月10日から昨日までの間に新型コロナで亡くなった方は15人※3。一方、コロナ禍が始まってからの死者合計は29名(市外2名を含む)。この30日間で、全死亡者数の半数以上のかたが亡くなられているのだ。そんな“破壊的”な状況の割には、その間のテレビのニュース報道に、切迫感や緊張感が欠けていたと感じるのは私だけだろうか。

 

緊急事態宣言が発令された最大の理由は、医療現場のひっ迫だろう。「入院調整中の患者がいる」ということが、「入院のキャパシティをフルに使っている」ことを意味するという解釈が正しければ、“入院調整中”が解消されない限り、医療現場の状況は変わらないと思う。入院調整中を解消するには、患者数を減らすか、コロナ感染者用のベット数を増やすしかない。

これまでの“入院中”の最大値は112人(2月3日)。仮に、個々のコロナ感染者の入院期間が10日とすれば、一日当たりの感染者数が、ベット数の1/10以下にならなければ、“入院調整中”は解消しない計算になる。112/10=11.2。一方、昨日一日の感染者数は14人※4。最悪期は既に超え、もうひと頑張りのところまで来ていると願わずにはいられない。

 

※1:新型コロナウイルス感染者の発生についてにおける1月24日および31日更新の累計退院者数(それぞれ864人および915人)から計算

※2:新型コロナウイルス感染者の発生についてにおける1月10日および31日更新の累計患者数(それぞれ1,811人および3,031人)から計算

※3:新型コロナウイルス感染者の発生についてにおける1月10日および2月9日更新の累計死亡数(それぞれ14人および29人)から計算

※4:新型コロナウイルス感染者の発生についてにおける2月8日および9日更新の累計感染者数(それぞれ4,170人および4,184人)から計算